2011年冬, 月4, 14:40-16:10
数理情報学II <基礎科学科3年>
シラバス
- 授業の目標と概要:
コンピュータを用いた数値的解析方法は,理工学を超えて,生命科学,臨床医学,金融商品研究などにまで応用範囲を拡げ,幅広く有益な知見をもたらしている.そして,複雑かつ大規模な問題のコンピュータによるシミュレーションが可能になり,実行されるにつれ,それに関わる数学的諸問題の解決への要請は強くなる.実際,シミュレーションは,コンピュータの内部で完結するものではなく,現象のモデル(微分方程式など)化,モデルの数学解析,近似と離散化,アルゴリズムの実装とプログラムの作成,データの可視化,現実データとの照らし合わせ,信頼性の検証などの一連の過程であり,それらが数理という幹で強く繋がっているのである.
本講義で扱うのは,上記の「近似と離散化」の部分である.すなわち,様々な物理現象の記述に現れる偏微分方程式を対象にして,数値的方法に基づく近似解法とその数学理論の概要を解説する.数値的方法としては,おもに差分法を対象とする.
- 内容:
- 熱方程式
- 熱方程式の差分近似
- 差分法の誤差解析
- 熱方程式の差分近似(ノイマン境界条件など)
- 反応拡散系の差分近似
- 波動方程式の差分近似
- Poisson方程式の差分近似
- その他の方法
- 参考書:
- 菊地文雄・山本昌宏:微分方程式と計算機演習,山海堂, 1991年.
- 田端正久:微分方程式の数値解析,岩波書店, 2010年.
- G. D. Smith: Numerical Solution of Partial Differential Equations,
Oxford University Press, 1965.
- 山口昌哉(編):数値解析と非線形現象,日本評論社,1996年(オリジナルは1981年).
- 成績評価:レポート
授業記録(配布物等)
- 第1回(10/17)
- 授業の説明(配布資料)
- 1. 熱方程式(初期値境界値問題,最大値原理,一意性,正値性の保存,Fourierの方法,解の構成)
- 第2回(10/24)
- 2. 熱方程式の差分近似
- (a)差分近似(前進差分,後退差分,中心差分,2階中心差分)
- (b)陽解法(陽的スキーム,\ell^\infty安定性,非負値性の保存)
- (c)単純陰解法(陰的スキーム,Banachの摂動定理,\ell^\infty安定性,正値性の保存)
- 配布資料
- 第3回(10/31)
- (c)の続き.補題3の証明
- (d)\theta法(陰的\thetaスキーム,\ell^\infty安定性,正値性の保存)
- (e)非斉次問題(陰的\thetaスキーム,\ell^\infty安定性,正値性の保存)
- (f)連立一次方程式の解法(三重対角行列のLU分解)
- 第4回(11/7)
- 3. 誤差解析
- (a)\ell^\infty解析(誤差の満たす差分方程式,残差の評価,誤差評価)
- 第5回(11/14)
- 第6回(11/21)
- 第7回(11/28)
- 4. Neumann境界条件
- 5. 反応拡散系
- (a)半線形拡散方程式(最大値原理,定常解,解の漸近挙動)
- 配布資料
- 第8回(12/5)
- (b)差分スキームと収束
- 6. 空間2変数の熱方程式
- (a)陽解法
- 配布資料
- 第9回(12/12)
- 第10回(12/19)
- 6. 空間2次元の熱方程式
- (a)陽解法
- (b)ADI法(ADI法の導出)
- レポート問題
- 第11回(1/16)
- 第12回(1/23)
- 第13回(1/30)
この講義は終了しました。