2012年夏, 木2, 10:40-12:10
計算数理II <数理128教室, 数学科4年>
数値解析学 <数理128教室, 大学院数理科学研究科>
シラバス
- 授業の目標と概要:
コンピュータを用いた数値的解析方法は,理工学を超えて,生命科学,臨床医学,金融商品研究などにまで応用範囲を拡げ,幅広く有益な知見をもたらしている.そして,複雑かつ大規模な問題のコンピュータによるシミュレーションが可能になり,実行されるにつれ,それに関わる数学的諸問題の解決への要請は強くなる.実際,シミュレーションは,コンピュータの内部で完結するものではなく,現象のモデル(微分方程式など)化,モデルの数学解析,近似と離散化,アルゴリズムの実装とプログラムの作成,データの可視化,現実データとの照らし合わせ,信頼性の検証などの一連の過程であり,それらが数理という幹で強く繋がっているのである.本講義で扱うのは,上記の「近似と離散化」の部分である.すなわち,様々な物理現象の記述に現れる偏微分方程式を対象にして,数値的方法に基づく近似解法とその数学理論の概要を解説する.数値的方法としては,おもに差分法(finite difference method, FDM)と有限要素法(finite element method, FEM)を対象とする.
- 内容:
- 熱方程式
- 熱方程式の差分近似(陽的スキームと陰的スキーム)
- 熱方程式の差分近似(シータスキームと非斉次問題)
- 差分法の収束解析
- Neumann境界条件
- 半線形反応拡散方程式
- 変分原理と有限要素法
- Sobolev空間と弱形式
- 正則な三角形分割
- 有限要素法の収束解析
- 最大値原理
- FreeFem++による数値計算(基礎編)
- FreeFem++による数値計算(非線型問題)
- Lax-Milgramの理論
- Galerkin近似
- 参考書:
- 菊地文雄・山本昌宏:微分方程式と計算機演習,山海堂, 1991年.
- 田端正久:微分方程式の数値解法II,岩波書店, 1990年.
- G. D. Smith: Numerical Solution of Partial Differential Equations,
Oxford University Press, 1965.
- S. Larsson and V. Thomee: Partial Differential Equations with Numerical Methods, Springer, 2009.
- 成績評価:レポート
- 数理分類番号:551
授業記録(配布物等)
- 第1回(4/5)
- 授業の説明(配布資料)
- 数値解析の意義と役割
- I. 熱方程式に対する差分法
- 1. 熱方程式(初期値境界値問題,最大値原理と解の一意性,Fourierの方法と解の構成,Duhamelの原理)
- 第2回(4/19)
- 2. 熱方程式の差分近似:(a)差分近似,(b)陽的スキーム,(c)単純陰的スキーム
- 配布資料
- 第3回(4/26)
- 2. 熱方程式の差分近似:(d)陰的\thetaスキーム,(e)非斉次方程式,(f)連立一次方程式
- 配布資料
- 第4回(5/10)
- 3. 収束と誤差評価:(a)\ell^\infty誤差解析(誤差の表現,残差の評価,誤差評価)
- 配布資料
- 第5回(5/17)
- (b)\ell^2誤差解析(固有値問題)
- 4. Neumann境界条件
- 第6回(5/24)
- 5. 非線形拡散方程式(定常解,解の漸近挙動,差分法,安定性,収束)
- 第7回(5/31)
- II. 有限要素法と変分原理
- 6. 変分原理(Poisson方程式,変分原理,Ritsz近似,Galerkin近似)
- 7. 有限要素法(三角形分割,標準的基底)
- 第8回(6/7)
- 第9回(6/14)
- 8. Sobolev空間(H^1空間, H^1_0空間,トレース,
Poincareの不等式,Sobolevの不等式,Rellichの定理,Wirtingerの不等式)
- 第10回(6/21)
- 9. 弱解と正則性(Rieszの表現定理,弱形式,解の正則性,Galerkin近似,Galerkin直交性,Ceaの補題)
- 第11回(6/28)
- 10. 正則な三角形分割(局所的補間誤差,三角形分割の正則性,Zamalの最小角条件,大域的補間誤差,参照要素)
- 第12回(7/5)
- 10. 正則な三角形分割(局所的補間誤差定理の証明)
- 11. 有限要素法の誤差解析(収束性,H^1誤差評価,L^2誤差評価)
- レポート問題(締め切り:8月29日)
- 第13回(7/12)
- 第14回(7/19)
この講義は終了しました。