2012年夏, 金2限, 10:40-12:10
計算数理I <数理117室 / 数学科3年>
数理情報学I <数理117室 / 基礎科学科3年>
シラバス
- 授業の目標・概要
線形代数学では、正則な行列を係数行列とする連立一次方程式は、一意な解を持ち、それはクラメールの公式を用いて表現できることを学んだ。しかし、もし、クラメールの公式をそのまま用いて、未知数が30個の連立一次方程式を解こうとすれば、現在利用できる最も速いスーパーコンピュータを用いても、100億年以上かかる見積もりになってしまい、現実的でない。一方、それをガウスの消去法で求めれば、手頃なラップトップ型パーソナルコンピュータを用いても、 1/100秒もかからない。このように、数学的に解が表現できる、あるいは解が存在するということと、実際に数値を得ることの間には、大きな溝があるのである。数学的な概念や方法を通じて、現実問題を研究する際には、当然、数値的な答えが要求される。そのような問題に対処するために、様々な数学的な概念を、具体的に数値を計算するという立場から研究する分野を数値解析と言う。本講義は、数値解析への入門を目的とし、1年および2年次に学んだ微分積分学や線形代数学に現れる諸問題、例えば、連立一次方程式、非線形方程式、定積分、常微分方程式などを、コンピュータを用いて数値的に解くための方法とその背景にある数学理論の解説を行う。
- 授業内容
- 浮動小数点数系
- 行列のノルム
- 連立一次方程式(定常反復法)
- 連立一次方程式(ガウスの消去法とLU分解)
- 連立一次方程式(安定性解析)
- 補間多項式
- Newton-Cotes積分方式
- 直交多項式
- Gauss型積分公式
- 非線型方程式
- Newton法
- 常微分方程式の初期値問題
- Runge-Kutta法
- 刻み幅の自動調節
- 教科書・参考書
- 山本哲朗,数値解析入門,サイエンス社(初版1976年,第2版2006年)
- 森正武,数値解析,共立出版(初版1973年,第2版2002年)
- 金子晃:数値計算講義,サイエンス社(2009年)
- 皆本晃弥,C言語による数値計算入門,サイエンス社(2005年)
- 履修上の注意
- 実際の数値計算には知識や論理のみでなく,経験も重要なので,
計算数理演習または数理情報学I演習も併せて履修することが望ましい.
- 本講義は,計算数理I(理学部数学科)と数理情報学I(教養学部基礎科学科)の合同授業.
- 成績評価
期末試験
- 数理分類番号
353
授業記録(配布物等)
- 第1回(4/13)
- 授業の説明,資料のスライドはCFIVEからダウンロードできます
- 0. 数値計算における誤差(浮動小数点数,丸め誤差,桁落ち,情報落ち)
- I. 連立一次方程式:導入
- 第2回(4/20)
- 1. ノルム(ベクトルのノルムと、行列のノルム、スペクトル半径)
- 第3回(4/27)
- 2. 反復法(Jacobi法,Gauss-Seidel法,SOR法,狭義優対角行列)
- 命題2.3の修正
- 第4回(5/11)
- 3. Gaussの消去法とLU分解(前進消去,後退代入,首座小行列,枢軸の非零性定理,LU分解)
- 第5回(5/18)
- 4. 安定性と条件数(条件数,Hilbert行列,Banachの摂動定理)
- II. 補間と積分
- 5. Lagrange補間多項式
- 第6回(5/25)
- 6. 複合Newton-Cotes公式(中点則,台形則,Simpson則)
- 7. 直交多項式(内積と直交性,直交多項式)
- 第7回(6/1)
- 7. 直交多項式(根の分布)
- 8. Gauss型積分公式
- 第8回(6/8)
- III. 非線形方程式
- 9. 反復法の例(Newton法,簡易Newton法,緩和反復法,不動点反復法,多変数の場合)
- 10. 反復法の解析(縮小写像の定理)
- 第9回(6/15)
- 10. 反復法の解析(収束の速さ,Newton法の解析)
- 第10回(6/22)
- IV. 常微分方程式の初期値問題
- 11. 一段法(基本定理,Euler法,一段法,局所誤差と大域誤差,局所離散化誤差と大域離散化誤差,収束性)
- 第11回(6/29)
- 12. Runge-Kutta法(2段数のRunge-Kutta法の具体的な構成)
- 第12回(7/6)
- 13. 連立微分方程式への適用
- 14. 刻み幅の自動制御(RKF45公式)
- 第13回(7/13) 期末試験
- 試験範囲:第I章〜第IV章(演習問題とほとんど同じ)
- 自筆のノートのみ持ち込み可(教科書,参考書,プリント,ノートのコピーは不可)
- 数学科の学生は,4/6と7/20は休講.
この講義は終了しました。